「残業なし・優しい上司」なのになぜ辞める? 若手の離職と「キャリア安全性」
- 870948
- 3 日前
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働き方改革が始まって約10年。若年層を中心に労働時間は劇的に減少し、有給休暇の消化率も大きく向上しました。
前回は若手の「リアリティ・ショック」についてお話ししましたが、おそらく20年前に新入社員だった方たちと比べると、今の新入社員にとって職場の過酷度は格段に減っているはずです。
しかし、就労環境は改善しているのに、若手の早期離職率は下がっていません。残業もなく、上司も優しく接しているのに、彼らはなぜ不満を抱き、会社を去ってしまうのでしょうか?
■ 満たされた「衛生要因」と新たな壁
伝統的なモチベーション理論であるハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」では、職場の要因を以下の2つに分けています。
衛生要因(不満の要因): 人間関係、給与、労働条件など。
動機づけ要因(満足の要因): 仕事の達成感、承認、責任、昇進など。
本来、動機づけ要因の不足そのものが、積極的な「辞める理由(不満足)」になるわけではないとされてきました。しかし現代の若手は、休みが取れて人間関係が良好(衛生要因が満たされている)にもかかわらず辞めていきます。
その謎を解く鍵が、「キャリア安全性」という概念です。
■ 「ゆるい職場」が生むキャリアへの不安
キャリア形成研究者の古屋星斗氏は、個人が現在の職場にいることで「将来のキャリアが守られている」「成長の実感がある」「市場価値を高められる」と感じられる心理的な確信を「キャリア安全性」と定義しています。[i]
仕事上の負荷には、大きく分けて3つの種類があります。[ii]
質的な負荷: 難易度が高い、新たに覚えることが多い
量的な負荷: 労働時間が長い
関係負荷: 理不尽な指示、人間関係のストレス
このうち、若手の成長実感を高めるのは「質的な負荷」のみです。量的な負荷や関係負荷は成長にはつながりません。
現代の若手にとって、「キャリア安全性が感じられない(=質的な負荷や成長機会がない)状況」は、単なる動機づけ要因の欠如にとどまらず、「ここに居ては将来生きていけない」という生存の危機(=衛生要因の悪化)として認識されているのです。
■ データが示す「定着しない」現状
実際に、厚生労働省のデータ[iii]を見ても、働きやすさが推進された近年の方が離職率は上がっています。
高卒の3年以内離職率: 35.9%(2019年) ➡ 37.9%(2022年)
大卒の3年以内離職率: 31.5%(2019年) ➡ 33.8%(2022年)
ちなみに、平成以降で最も離職率が低かったのは、大卒が1992年(23.7%)、高卒が2009年(35.7%)です。これらはバブル崩壊直後やリーマンショック直後であり、「外の労働市場が危険すぎるから辞められない」という状況でした。対して今は、「社内で成長できないことの方が危険」と判断して辞める時代へと変化しています。
■ 企業ができるアプローチ
この不安を取り除き、従業員のキャリア安全性を確保するためのアプローチとして、以下をご紹介します。
1. 「セルフ・キャリアドック」の導入 厚生労働省も推奨している、企業が個人のキャリア形成を促進・支援する仕組みです。定期的なキャリアコンサルティング等を通じて、社員自身の成長実感を持たせることが有効です。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000192530.pdf
2. 第三者への相談窓口の設置 社内の人間には言いづらい「将来への漠然とした不安」を受け止める存在が必要です。「みんなのキャリアの保健室」では、利害関係のない第三者として従業員の不安をヒアリングし、キャリア構築をサポートします。
実は、職場がキャリア開発に積極的になりキャリア安全性を高めたとしても、結果的に離職率の低下には直結しない可能性もあります。しかし、それでも自社で培ったスキルを持つ人材と、組織が緩くつながり続ける「ハイパーメンバーシップ型組織戦略」[iv]という新しい活用の道があります。
この新しい組織と個人の関わり方については、またの機会にご紹介します。
【参考・引用文献】 [i] 古屋星斗[2025]「あの若手はなぜ『辞めない』のか」一橋ビジネスレビュー73巻2号 [ii] 古屋星斗[2024]「会社はあなたを育ててくれない」大和書房 [iii] 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」令和7年10月発表分 [iv] 古屋星斗[2024]「会社はあなたを育ててくれない」大和書房
みんなのキャリアの保健室instagram https://www.instagram.com/career_hokenshitsu_personal/




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