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映画『マイ・インターン』に学ぶ シニア社員のスマートな振る舞いと貢献を引き出す方法

  • 870948
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

年を取るにつれ、若手から疎まれていないか、心配になるミドル~シニアは多いのでは? これは決して本人の性格や年齢だけの問題ではありません。それは、「過去の成功体験やエゴを手放せない個人」と、「彼らに最初から期待を持たない組織」の共犯関係によって生み出される構造的なエラーです。

映画『マイ・インターン』をご覧になったことはあるでしょうか。舞台は、設立わずか1年半で社員200名規模に急成長したファッションECサイト。そこに、70歳のシニア・インターンであるベン(ロバート・デ・ニーロ)がやってきて、若き女性CEOジュールズ(アン・ハサウェイ)や若手社員たちと交流を深めていく物語です。

ベンはなぜ、煙たがられるどころか、組織の精神的支柱(賢人)になれたのでしょうか。そこには、シニア自身が実践すべき「老害にならない」振る舞いと、組織側が用意すべき「老害にしない」プロセスが見事に噛み合っていました。


【個人の視点】映画に学ぶ4つの作法

第一線を退いたシニアが、過去の自分を「学びほぐす(アンラーニングする)」ためには、自らの振る舞いを変える必要があります。

  • 作法①:手柄を若手に譲り、黒衣(くろご)に徹する 「自分は仕事ができる」とアピールし、若手から仕事と自信を奪ってしまっていませんか。映画の中でベンは、CEOの無茶振りに疲弊していた経営学出身の優秀な秘書(ベッキー)を裏からサポートしました。彼女に的確なアドバイスをして資料をまとめさせ、CEOに提出させたのです。「自分が目立つ」のではなく、「若手の能力を引き出す黒衣になる」。主役の座を降りるというエゴの手放しが、結果的に組織内での最大の信頼を生みます。

  • 作法②:「目ざとさ」を封印し、求められるまで語らない 経験豊富なシニアが持つ「観察眼」は、時に若手から「監視されている」「小姑のように目ざとい」と煙たがられます。ベンは組織の歪みにいち早く気づきながらも、相手から意見を求められるまでは決して口を出さず(説教をせず)、まずは誰もやりたがらなかった「散らかったデスクの片付け」など、行動で信頼残高を積みました。

  • 作法③:「働く側のエゴ」を捨てる 役職がなくなっても「かつては自分が会社を回していた」「もっと評価されたい」という承認欲求を引きずってしまう人は少なくありません。しかしベンは、かつてここにあった電話帳印刷工場の責任者だったという過去を全くひけらかしませんでした。「これ以上出世しなくていい」「自分が主役にならなくていい」と悟り、一歩引いたスタンスを貫いたからこそ、誰の脅威にもならず、自然と若手の懐に入ることができたのです。

  • 作法④:エゴは捨てても「自分のスタイル(美学)」は貫く 若手や新しい環境に馴染もうとするあまり、無理をして若者言葉を使ったり、自分の信念まで曲げて迎合したりする必要はありません。ベンは若者のITツールやフラットな文化は素直に学びますが、職場では常にクラシカルなスーツを着こなし、「ハンカチは女性に貸すためにある」という紳士としての美学(スタイル)は決して崩しませんでした。「過去のやり方」は手放しつつも、時代に流されない「プロとしての矜持」は貫く。このブレない芯があるからこそ、若手から「最高にクールな大人」としてリスペクトされるのです。


【組織の視点】シニアの貢献を引き出すための方法

一方で、シニアを受け入れる組織(経営層やマネジメント層)にも、彼らを腐らせないための責任があります。

  • 条件①:「社会貢献」の枠から引きずり出す 当初、CEOのジュールズにとってベンの採用は単なる「社会貢献(コミュニティへのアピール)」に過ぎず、戦力として全く期待していませんでした。日本企業でも「法対応だから」「福祉的雇用だから」と期待をかけず、簡単なルーチンワークに押し込めるケースがあります。この「期待の欠如」こそが、シニアの存在意義を奪い、意固地な老害へと変貌させる最大の要因です。

  • 条件②:若手から教える「リバースメンタリング」の土壌 映画では、若手社員たちがPCの立ち上げ方からFacebookの登録方法まで、ベンに対してフラットに教え、ベンも素直にそれを受け入れます。「教える・教えられる」という世代を超えた双方向の学び(リバースメンタリング)の土壌が、シニアの価値観をアップデートさせ、孤立を防ぎます。

  • 条件③:「目ざとさ」をリスク管理として重用する 急成長によるマネジメントのほころび(カオス状態)を修復するには、ベンのような「違和感に気づく力」が不可欠でした。シニアの口出しを単なる「小言」として排除するのではなく、組織の防波堤として正しく配置し直すことが、経営の役割です。


「もう私の会社ではない」という最高の手放し

老害化してしまうシニアに最も欠けているのは、「今の会社は、もう自分の時代のものではない」という健全な諦め(一歩引く姿勢)です。

ベンは、自分のやり方を押し付けたり、組織変革を起こそうとはしませんでした。「彼女が創った、彼女の会社」であることを心から尊重し、「今の自分に何がサポートできるか」に徹しきったのです。

出世競争や承認欲求といった「働く側のエゴ」を手放し、次世代の舞台を整えることに喜びを見出した時、シニアは老害から組織の賢人へと昇華します。


主役の座を降りた先にある、豊かなキャリアの最終章

最初は単なる「社会貢献」として採用されたベンは、働く側のエゴを捨て、自らの美学を貫いたことで、最終的にCEOにとって最も信頼できる右腕となりました。

第一線を退いたミドル・シニア層に求められるのは、かつての地位や手柄にいつまでも息を切らしてしがみつくことではありません。エゴを手放し、他者支援やリスク管理に自らの経験を惜しみなく注ぎ込むことも、幸福で生産的なキャリアの最終章の一つのあり方です。

映画が公開されたのは2015年。すでに10年以上前のことになってしまいました。もしかしたらこの期間に、シニアはサポートやメンターの役割よりもプレーヤーとして活躍しなければならない時代になっているかもしれません。それでも、自分のスタイルを貫きながら、若い人をサポートし、若い人から学び続ける姿勢を持ち続けたいものです。


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