シニア活用をパワーに:年齢とともに能力と意欲は低下するのか?
- 870948
- 5 日前
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厚生年金の受給開始年齢の引き上げに伴い、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられました。これに対応するため、定年制の廃止や定年年齢の引き上げ、あるいは希望者全員の継続雇用制度の導入など、各企業で制度の整備が進んでいます。
しかし実態としては、60歳を境に「不連続で大幅な報酬減」を労働者に強いるケースが少なくありません。企業側の本音としても、シニア人材の活用は戦略的なものではなく、「法対応のための雇用保障」や「長年勤めてくれたことに対する福祉・恩情」という位置づけに留まっているのが現状ではないでしょうか。
若手が採れない時代、シニア活躍を阻む「アンコンシャス・バイアス」
生産年齢人口が減少の一途をたどる現在、特に中小企業にとって若手人材を容易に確保することは極めて困難になっています。本来であれば、社内にいるシニア層は喉から手が出るほど欲しい「即戦力」のはずです。
それにもかかわらず、シニア層の本格的な戦力化が進まない背景には、経営層やマネジメント層が抱く「加齢によって能力や意欲は衰えていくにちがいない」というアンコンシャス・バイアスが潜んでいます。
知能は衰えるのではなく「質が変わる」
人間の知能は、大きく「流動性知能」と「結晶性知能」の2つに分類されます。
流動性知能: 新しい場面に適応し、情報を素早く処理する能力(暗記力、計算スピードなど)
結晶性知能: 過去の経験や学習から蓄積された知識を活用し、判断や理解をする能力(語彙力、総合的な判断力など)
知能検査(WAIS)の年齢別スコアの推移を見ると、「処理速度」などに代表される流動性知能は20代をピークに加齢とともに低下していくことがわかります。 一方で、「言語理解」に代表される結晶性知能は、加齢による大きな落ち込みは見られず、シニア期に至るまで非常に高い水準を保ち続けることが明らかになっています。
つまり、「シニアは能力が落ちる」というのは一面的な見方に過ぎません。スピードや単純な記憶力は若手に譲るとしても、長年培った知識や経験をベースにした総合的な理解力・判断力や、語彙力を使った説明力・思考力においては、シニア層は極めて優秀なリソースを保持しているのです。
4つの能力の加齢変化

出典:E.O.Lichtenberger and A.S.Kaufman,Essentials of WAIS-Ⅳ Assesment,Wiley,2009
仕事への意欲・満足度は年齢とともに「上がる」
もう一つ、「シニアになると仕事への熱意が失われる」というのも大きな誤解です。
リクルートによる「仕事の満足度」に関する年齢別の調査データを見ると、興味深いU字型のカーブが描かれています。仕事に満足している人の割合は35歳~50歳付近を「谷底(約35〜37%)」として、そこから年齢が上がるごとに上昇していく傾向が示されています。 60代後半から70代にかけては、実に60%前後の人が高い満足度を示しているのです。
このデータは、適切な環境と役割さえ与えられれば、シニア層は若手やミドル層以上に、高いモチベーションと満足度を持って仕事に取り組むポテンシャルを秘めていることを証明しています。
仕事に満足している人の割合

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」 注:中央3年移動平均により算出している。2019年時点の数値 (https://www.works-i.com/research/project/70s/teinengo/detail005.html)
まとめ:福祉から「戦略的活用」へのシフトを
結晶性知能(言語理解など)は加齢でも落ちない
仕事への満足度は年齢を重ねるほど高まっていく
「年齢を重ねると能力も意欲も落ちる」「とりあえず定年まで居てもらう」といった考えでは、せっかくのシニア人材のポテンシャルを活かせません。
シニアの活用は、もはや義務や福祉ではなく、企業が生き残るための最も確実な「成長戦略」です。
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